2011年9月18日日曜日

テニス日記(3) 2011年8月19日テニスオフ参加(シングルス)

久しぶりに、シングルスの試合をしました。市民大会や草トーナメントではなく、テニスオフで申し込んだので、プライベートな試合です。クレーコートで朝7時から2時間。私と主催者の2名だけでしたので、通常の(=ノーアドバンテージではない)1セットマッチを2回、つまり2セットのゲームをしました。

結果は、3-6、6-2でしたので、一応、引き分けと言ったところでしょうか。

 小金井(クレー) 3-6, 6-2

シングルスの試合は(仲間内の練習を除いては)数か月ぶりでした。最近は普段からシングルスを意識した練習をしていたので、勝ち負けは別としても、久しぶりのシングルスの試合だった割にはみっともない試合ではなかったと思います。

今のレベルの私にとって、初対面の人とシングルスの試合をするのは、貴重な経験です。初めてのオフ参加のときは緊張で足が震えたのですが、今回は、最初から平常心でゲームができました。今後はもう緊張はしないという程までの自信はありませんが、「こちらのレベルが低すぎて相手に迷惑をかけないだろうか」「緊張で足が動かなくて、ペアに嫌がられないだろうか」など、余計なことばかり頭の中でぐるぐる回っている状況は、少しずつ減っていくような気がします。

逆に、ゲームの最初から(またはゲーム前のアップの時から)「この試合をどのように進めようか」「自分のプレーをどのように展開しようか」を、考えるようになりつつあるということです。よい傾向だと思います。

今日の試合の収穫は、第1セットで3-6で負けた後、間の休憩時間に第2セットに向けての対策を考えることができたことです。これまでとは違い、椅子に座って第1セットのゲームを冷静に振り返ることができました。普段は、体にも頭にも余裕がないため、体を休めている間に休憩時間が終わってしまい、第2セットも第1セットと同じような試合展開になることが多いのです。

今日の相手は、ファーストサーブもセカンドサーブもよいサーブを打つ方で、場合によっては(クレーコートであるにも関わらず)サーブアンドボレーを仕掛けて来ました。また、サーブではなくストローク戦になった時も、こちらが打つボールが短くなったら、どんどんとネットに出てくるプレースタイルでした。

一方、私は、早朝とはいえ、暑さでばて気味です。認めたくはないですが、もう若いころのように、暑くても体が動く、足が動くというわけにはいきません。また、動かなくては!と思うと、膝をしっかり曲げて、ステップをしっかり踏み込んで打たなくてはならないわけで、それだけ体力の消耗が激しくなります。(そのポイントはできても、次のポイントで足が動かなくなってしまいます。)しかも、精神的に追い込まれると集中力も落ち、ますます足が動かなくなる悪循環です。

相手のサーブがよい。こちらのリターンが短くなる。相手はアプローチショットでオープンコートに打ってくる。私は、パスを打つにしても、ボールを沈めて相手にボレーを打たせるにしても、ロブを上げるにしても、リターンポジションから逆サイドに移動して、(正確なショットを打つために)しっかりとポジションを取って打たなくてはなりません。この、移動する・しっかりとポジションを取る、だけの体力が、今の私にはないわけです。

サーブのリターンだけではなく、ストロークでも同じです。走ってパッシングショットというシチュエーションを、私は避けたかったのです。走って正確なパッシングショットを打つためには、下半身の安定が必要です。これが、容赦なく、私の体力を奪います。

そこで、「なんとか70%ぐらいの力で勝てないか」と、そんな風に考えました。

チャンスがあればネットを取ってくる相手のプレッシャーと、70%で戦いたい私の体力。ここから見えてきた私の戦略は、「ボールの(展開の)ペースを遅くする」ということです。

展開のペースを遅くするというのはどういうことでしょうか?それは、ボールがネットの上を行きかう時間をできるだけ長くすることです。

低く速いボールがネット際を通るような速いペースには、私の足と体はついていけません。ついていけないということは、単に速度と時間の問題ではなく、同時に精神的なプレッシャーがかかります。速い展開についていくため、動かない足をしっかり動かし、その展開でボールをヒットせねばならないのです。苦しい体力で。その結果、ますます苦境に立たされてしまいます。

私が取った戦略は、自分のペースで試合を進めることができるように、展開を遅くすることでした。具体的には、深めのボールを打つことでネットの高いところをボールが通り(ロブという意味ではありません)、自分がボールを打ってから相手からのボールが返球されるまでの時間を長くしたのです。

相手のサービスがよい場合であっても、強い球ではなく、できるだけ「しっかりと、ゆっくりと、深くリターンを返す」ということを意識しました。そのリターンボールが返ってくる時も、同様に、「しっかりと深くボールを打つ」ということを意識したのです。相手からのボールがあまり強くない(深くない)時には、どうしても、ボールを強くヒットしたくなります。しかし、それも我慢することにしました。こちらが強い球(速い球)を打つことは、自分からペースを上げることになるからです。

私は、第2セットでは、「ミスしない範囲でしっかりとボールを深く運ぶこと」「全体のボールのペースを遅くすること」に専念したのです。

もちろん、すべてのボールが、このペース(私のペース)で動くわけではありません。相手がよいサーブを打ち、私のリターンがあまり良くなく、相手のサーブアンドボレーでファーストボレーの餌食になることもあります。しかし、その場合でも、次のポイントで、私は再び「遅いペース」に持ち込むようにしたのです。

そして、その方法は、功を奏しました。時間的な余裕ができた私は、常に70%の力でプレーができるようになったのです。これは、さらなる副産物を生みました。余裕ができた分、いざという時、例えばパッシングショットを打つ時にだけ、100%の力を出すことができるのです。常に100%は難しくても、いざという時にだけ100%であれば、今の私でも十分に対応可能です。

70%で様子を探り、勝負をかける時だけ100%を出す。これが私の戦略です。

また、べつの副産物もありました。私の中で、戦略が明確になったことです。しかも、その戦略は「展開を遅くする」という単純なものです。その分、私にとっては考えることが少なくなり、メンタル面でも余裕ができてきたのです。

相手の速いペースにのまれないように遅いペースで展開するためには、上に書いたように、スピードがなくてもよいので深い球を打つことが重要です。遅くても浅い球では攻め込まれるので意味がありません。

なお、深いと言ってもロブやムーンボールではだめです。相手はコースを簡単に変えることができますし、またこちらにさらにムーンボールで返すこともできます。前者は左右には知らされますし、後者は前後には知らされます。これでは、意味がありません。

同時に、もう一つ重要なことがあります。それは、こちらサイドでオープンスペースを作らないということです。

オープンスペースを作ると、そこに打ち込まれた場合(さらに、相手がネットを取った場合)には、こちらは100の力を要求されます。それが繰り返されると、精神的にも、肉体的にも、プレッシャーが大きくなるのです。

オープンスペースを作らないということは、一言で言うと、ストレートにボールを打たないということです。(この理由についての説明は不要でしょう。)相手がネットを取った時などの特殊な場合を除いては、ストレートを打つという誘惑に負けないことが大切です。自分がセンターでボールをヒットできる場合などで、コースを変えることはありますが、それは、自分が逆サイドに簡単に移動できるときだけです。その場合は、オープンコートを作らなくて済みます。

つまり、「速くなくてもよいのでしっかりと振り切ったボールをクロスに深く返し、相手のボールが返ってくるまでにこちらがボールを待つ余裕を持つ」という、テニスの中でも(おそらくもっとも基本的な)戦略を取ったのです。これにより、私は、走らされることもなく、(強く打つ必要がないので)70%の力でボールを打つことができるようになりました。

面白かったのは、この戦略を取り始めてからは、汗をかく量が減ったことです。第1セットではシャツを3度も替えたのですが、第2セットは一度も替えませんでした。これは、おそらく、70%で(楽に)ボールを打つ形になったからだと思います。

この経験は、今後の私にとっても貴重でした。なぜなら、この遅い展開のプレースタイルは、相手によらない「私のスタイル」だからです。どのようなタイプのプレーヤーが相手であってもこの典型に持ち込むことが、これからの私の勝利への道だと思います。私は、もしかしたら、やっと、自分のシングルスのプレースタイルをつかみかけているのかもしれません。

そして、よく考えてみると、これは、メシールのプレースタイルにも近いように思います。メシールが、100%の力でボールをヒットし続ける試合は少ないですし、特に相手がストローカーの場合には、メシールは何より自分のペースを作ることを大切にします。相手を自分のペースに引きずり込んだ時のメシールは強いです。相手は、さほどボールを強くヒットするわけではないメシールのプレーに翻弄されて、最後には、クモの巣にかかった蝶のようにがんじがらめにされるのです。

もちろん、世界ランキング4位の選手と私とを比較するのはおかしいでしょう。しかし、なんとなく、メシールもこんな気持ちで戦っていたのかなと思った試合でした。

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